ピヴォ×みんサル

フットサルのだいご味を奪わないでくれ!【山下浩正コラム】

トランジションからのカウンターは僕にとって永遠にフットサルの醍醐味だ。

 

▼そのためにこのタイミングで試合を止めたのか!?
ピーッ!!!

そのとき、レフェリーによる笛が激しく吹かれた。

レフェリーの笛の音量と音質は状況によって異なるが、このときのそれはいずれも最大限のものだった。

取材という形でFリーグの試合にかかわる中で、僕は、攻守の切り替えからのカウンターの発動の瞬間が好きだ。
小さなボールを相手ゴールに沈めるためにチームのエネルギーのすべてを惜しみなく投入し襲いかかる。
しかし、それがいったん失敗に終わると、相手によるカウンターのカウンターが発動となる。
さらには、カウンターのカウンターのカウンターにでもなろうものならカメラのファインダーを通してシャッターを押し続けてはいるものの、もう、ほとんど、仕事を忘れてゲームに没頭している。

ところが、あろうことか、そのフットサルのだいご味を根こそぎ奪い取ろうという人たちがいる。
ほかでもない、レフェリー(審判)だ。
試合をコントロールするはずの立場にいながら試合を壊している。
僕にはそうとしか思えない。

では、山下は何を持って「壊す」といっているのか。
その理由を語ろう。

 

大阪戦の後半、すみだのガリンシャが右からアタックに行く。ゴールのニアポストに注目!

 

そのガリンシャの折り返しに栗本が飛び込むが惜しくも合わず、大阪のゴレイロ檜山にキャッチされる。カウンターが破たんした瞬間だ。そして檜山はすかさずフリーの堀米にスロー、カウンターのカウンターを仕掛けた。

 

そのシーンを拡大したのがこの写真です。ガリンシャのゴールポスト部分と比較してください、この目視しにくいゴールポストのズレを直すためにレフェリーは試合を止めたのです。ありえますか!?

 

そのズレを直すレフェリー。そこ!? と、ぶ然とした表情であらぬ方向に視線を送るゴレイロの檜山。

 

檜山はおとなしいから黙っていたが、大阪のブラジル人助っ人アルトゥールは黙っていなかった! ベンチからポルトガル語(多分)で激しくかみついていたが、「ゴール泥棒!」くらいのことはいったかもしれない。いずれにしても2人の心情と対応はよく理解できる。

 

それは、去年の10月14日のこと。町田市総合体育館で行われたFリーグ第18節・共同開催町田ラウンド「フウガドールすみだvsシュライカー大阪」の後半、入団3試合目のすみだのブラジル人助っ人、♯7ガリンシャが右からアタックに行ったシーンだ。シュートは無理と判断したガリンシャは仲間のフォローを期待してゴール前へマイナスのパスを放つ。しかし、♯17栗本のフォローが間に合わず、ボールは大阪のゴレイロ♯21檜山がキャッチ、檜山はすかさずフリーの♯堀米にパス、大阪はカウンターのカウンターを仕掛けた!

ところが何を思ったか、大阪がカウンターを仕掛けた直後にレフェリーは笛を高らかに吹いてゲームを止めたのだ。

えっ!? 何?
会場に「?」マークが飛び交う。
分かるわけがない、ピッチに目に見えて分かる変化は見当たらないのだから。
分かっているのは笛を吹いたレフェリーだけだ。
“彼”はコーナーアーク付近からすたすたとゴールに近づき、ニアのポストを両手で支えて位置修正をし始めた。
よくよく見てみると檜山の右手側ポストが、ゴールライン上のあるべき位置から後方へ2cm、多めにみても3cmほどズレているかどうかという状態。

キミはこのズレを直すために試合をストップしたのか!?
それも今まさにカウンターのカウンターを大阪が仕掛けたときに!

僕の大好物のカウンターをなんてことするんだぁー!!

 

▼観客に満足して帰ってもらおうと選手たちは
奮闘しているのにこのタイミングで笛かよ!

Fリーグは今、観客数の伸び悩みに苦悩している。
直近の5年間の総入場者数は以下のとおりで確実に減っている。

2014/2015:259,687人
2015/2016:232,295人
2016/2017:227,488人
2017/2018:197,828人
2018/2019:181,405人

試合では迫力あるフットサルを観客に提供しようと選手たちは奮闘している。
もちろん、これが8cm幅のゴールラインから完全にズレてしまうほど動いてしまったならわかる。
だが、わずか2、3cmのズレだ。
アリーナ席から見てもそのズレを確認するのは難しいだろう。
少なくても、大阪サイドから見て右側コーナーアーク付近で写真撮影していた僕にはズレているとは思えなかった。

なのに、ルールを順守した結果だとは思うが、このタイミングで笛かよ!

そういいたくなる。

しかもこのズレはガリンシャがアタックする前に、ゴール前でごちゃっとしたときに誰かの体が触れてそうなったらしい。
それを見逃しておきながら、再度いうが、このタイミングかよ!

もちろん、このわずかなズレを放置しておいたら、ボラのようなパワーシューターのキックの直撃を受けようものなら傷はもっと深くなることは承知している。

でも、この一件を山下は自分のつぶやきとして、愚痴として終わらせたくない。

僕は、納得の“解”を求めて、日ごろからお世話になっている人に連絡をしてみた。
その人は、「トップリーグの担当経験もあるレフェリー」で、若手レフェリーのインストラクターでもある人物だ。
果たして、これでいいんですか! と投げかけた山下に対してその人の回答は?

 

▼ゴールはゴールラインの中央に設置する

『ご質問の件ですが、レフェリーの研修会においても「ズレたら止めて修正する」ということは基本であるというのが共通認識です。
ズレたら止めるという考えは、競技規則p.8(第1条ピッチ)にあるゴールの要件を満たさなくなったという理解からくるものです。

フットサル競技規則8 / 第1条 ピッチ ゴール
ゴールを1基、それぞれのゴールラインの中央に設置する。
ゴールポストとクロスバーは、同じ幅と同じ厚さで、8cmとする 。
(注:ゴールラインをはじめすべてのラインは8cmでなければならないと規定されている)

選手の気持ちや山下さんのおっしゃることは大変よく理解ができます。
そして、次のボールアウトオブプレーで修正すればという気持ちに一定の理解は示せます。
一方で、ゴールがズレているから入った。もしくは入らなかった。
定位置にあるから、入った。入らなかった。という状況を、選手はどれくらい許容するでしょうか。
また、競技規則の中にあるゴールの設置要件が満たされていない状況下で、試合を進めることはレフェリーチームとしては決して許容されるものではありません。

「そこは空気を読んで」ということに話は広がるかもしれませんが、空気を読んだ結果、二次災害、三次災害へと発展していくのは想像に難くありません。

レフェリーのセミナーでは、試合を停止するタイミングが重要であると示されています。
まさにゴールがズレたタイミングで試合を停止することが必要で、そのタイミングが遅れれば遅れるほど、試合の展開が変わってしまうため、ボールの保持チームによって止めることでの有利・不利が生じてしまうのだと思います。

やはり、競技規則にのっとり正しい状況下で試合をするということが、まず第一です。(ルールを正しく適用していくのはレフェリーの役割ですから)
その中で、試合を担当するレフェリーは試合を停止するタイミングをきちんとつかむということだと思います』

 

彼からの回答はある意味、予想どおりのものだった。
レフェリーサイドから見たとき、そのとおりだと思う。

前述したとおり、2cm、3cmのゴールのズレを放置しておいて、すみだのボラのような、湘南ベルマーレの小門のようなパワーシューターの一撃を食らったら、たちまち8cm、10cmと傷が深くなるだろうし、彼のいうとおりそれを選手が許容できるとは思えない。
わかっているつもりだ。

ただ、僕はレフェリーではない。
心情的に観客に近い立場だ。
2cm、3cmゴールが動いただけで、せっかくのカウンターを止められる、なかったことにされる。
それは、チケットを買ってアリーナ席や観客席で観戦している観客にとって、はなはだ矛盾に満ちたことのはずだ。

そんなわけで、彼がせっかく回答を寄せてくれたというのに、どこかモヤっとしたものを感じていた。
そんなときに彼から「ゴールが動いたときの対応について」と題する新たなメールが届いた。

 

▼レフェリーはその場の空気感も感じて判定を下すことが時には必要

『ゴールが動いたときの対応について。先日のセミナーで試合中ゴールが動いたときの対応について話し合いました。その結果、前回のお話では「直ちに停止してゴールの位置を正しくする」ことが、レフェリーの基本的な対応になると書きましたが、「直ちに試合を停止するかどうか」は、特に得点シーンにつながるような場面では大変難しい判断が求められます。
さまざまな情報(や要素)を集約してレフェリーは「試合を止める、止めない」の判断をしますが、下される判定・判断が、「Game Empathy」があるかどうかについて、トップレベルの試合を担当するレフェリーは考えなくてはならない、というのが先日のセミナーでの結論でした。

この回答に中にあった「Game Empathy」という初めて聞く言葉について、その場で改めて質問してみました。
答えは以下のとおり。

<Game Empathyとは「ゲームに共感すること」を意味し、レフェリーの判断・判定、プレー含めてその試合にかかわるすべての人たちがそのゲームに共感できるかどうかということです。決してルールを曲げて納得を得るということではありません。どうしても、ルールを超越したことが起きたときに、ルールの理解・適用を踏まえたうえで、最終判断を導き出すためにGame Empathyを感じるというイメージです>

これは、すべての場面で通じることで、1つの反則の判定、1つの対応をとってみても、「Game Empathy」があるかどうかは大変重要です。しかしながら、まずは競技規則を正しく理解し適用する、その中で発生してくる競技規則が適用しづらいケースについては、「Game Empathy」が重要になってくるのだと思います。

例えば、ズレたゴールを正しく定位置に戻すことはもちろんですが、シュートがゴール方向に撃たれて、まさにゴールに吸い込まれようとしているとき、わずかにゴールがズレているからといって試合を止めて、そのシュートを取り消してもよいのでしょうか。
このような場合、ほとんどの観客、ピッチにいる選手、両ベンチ役員は「ゴール」を期待している雰囲気が醸成され、得点した側も、失点した側もどちらもそれぞれの状況を理解している。
そのようなときの判断こそ、レフェリーがそれぞれの状況を汲み取り、共感することが大切であるということです。

状況は変わりますが、キックインやフリーキックなどについては、「ここ」、「そのあたり」、「あのあたり」の言葉を使い分けています。

・フリーキック→「ここ」:位置がズレるとキッカーによって得意不得意な角度などがうまれてしまいます。
・キックイン→「そのあたり」、「あのあたり」:大きく逸脱しているのはダメですが、大まかに合っていれば、試合の進行をスムーズにさせる目的で、運用しています』

僕のささやかな提起がフットサル1級審判セミナーの議題になったのだとしたら、うれしい。
でも、ちょっと難しい話になってしまった。要は、以下の一文に尽きると思う。

「まずは競技規則を正しく理解し適用する、その中で発生してくる競技規則が適用しづらいケースについては、「Game Empathy」が重要になってくるのだと思います」

これを僕なりに平たく解釈すると、ほんの2cm、3cm、ゴールがズレたとき、どのタイミングで試合を止めるかは、レフェリーがその場の空気感を感じて判定を下す、そういうことだと思う。

そこを考えながらレフェリーが笛を吹いてくれれば、僕の大事なフットサルのだいご味が奪い取られることはないはずだし、お金を払って観に来た人たちをないがしろにすることもない。

 

(取材・文/山下浩正)

 

コメント

みんサル

個サルを検索する ひとりでも参加できる個サルやイベントに行ってみよう!

大会にエントリーする 仲間や友達を集めてフットサル大会に参加しよう!

全国のフットサル施設 全国のフットサル施設からお気に入りの場所を探そう!

RANKING

Special Thanks

  • ベストパートナー
  • ボアスコンプラス