ピヴォ×みんサル

『育成』にかじを切った、人気チーム・ペスカドーラ町田の苦悩と歓喜【山下浩正のフットサル!フットサル!】


若手重視の路線を推し進めるルイス ベルナット監督(左)と田中 フランシスコ政明通訳。

 

▼クラブ社長自ら『育成』重視の方向性を公表

ペスカドーラ町田がクラブとして、『育成』重視の方向性を公表したのは昨シーズン第31節(1月27日)のホーム最終戦セレモニーだった。

町田の経営母体、株式会社CASCAVEL FUTSAL CLUBEの山本敏彦代表取締役社長は、「本当に苦しいシーズンだった」「今日は勝利で終えたかった」「(クラブの目標である)リーグ優勝も、プレーオフ進出も残念なことにかなわなかった」と、チームが5位でシーズンを終えた無念をファン、サポーターに率直に報告した。

その直後の個別インタビューで山本社長は、来シーズンの構想についてこうコメントした。

「もちろん、助っ人外国人というのも大事ですけど、それだけじゃなく、やっぱり、(アスピランチ=サテライト=、ユース、ジュニアユースの選手を)ちゃんと育てていくっていうことをチームでやっていかないと、年間通して戦っていくのは厳しいのかなというのは、ここ数年で実感しています」

 

岡山孝介監督退任とコーチ就任について
ダニエルサカイ選手退団について

 

こうして、社長自らが示した方向性を踏まえて町田は、2019/2020シーズンを前に、4月2日、若手の育成にたけたキャリアの持ち主で、スペイン人のルイス ベルナット監督を招請。来日1か月後(5月5日)の当サイトのインタビューで同監督は、「最初の目標は毎週の試合に勝つこと」としつつ、「今のチームにベテランがたくさんいるので、育成の強化をして、若い選手に世代交代していくのが目標でもあります」と明言している。

同時に新監督は、若手の中には有望な選手がそろっているとし、実名で示した。

「アスピランチでは、ケイタ イトー(伊藤圭汰)、ミツル ナカムラ(中村充)、ゲンスケ モリ(毛利元亮)というのが注目選手です。このほかにも4人のユースの選手をトップに上げています。ですからタレントのある若手がいることは明確です。
それに加えて、上がってないアスピランチやU-18にも可能性のある選手はたくさんいるので、楽しみです。昇格した若手選手が徐々にチームの主役になっていけるように努力していきます」

 

▼開幕節で平均年齢19.8歳の若手5人を起用

そして、5月26日、新監督の指揮の下、町田は新シーズンの開幕戦を迎える。ベンチ入りメンバーには次のとおり若手が起用された。

♯14 FP 伊藤圭汰(22歳/ペスカドーラ町田アスピランチ=以下、アスピランチ)
♯18 FP 毛利元亮(18歳/アスピランチ)
♯20 FP 甲斐稜人(17歳/アスピランチ)
♯21 FP 二井岡嵩登(21歳/アスピランチ、Fリーグ特別指定選手)
♯41 FP 菅谷知寿(21歳/アスピランチ、Fリーグ特別指定選手)

5人の平均年齢は19.8歳。
5人を除く9人のそれは30.8歳。なんと、11歳の開きがあり、チーム内にまるで2つのチームが存在するかのようだった。
また、ダニエル サカイ、アグストの2人が離脱し、フィールドの外国出身選手は森岡薫とクレパウジ ヴィニシウスの2人だけとなった。

チームは大きく変貌した。
そのチームの第6節までの試合結果を見てみよう。

第1節 2-4 シュライカー大阪(C)
第2節 3-2 湘南ベルマーレ(A)
第3節 5-7 フウガドールすみだ(H)
第4節 1-8 名古屋オーシャンズ(A)
第5節 2-7 バサジィ大分(H)
第6節 2-4 立川・府中アスレティックFC(共)
(C=セントラル、A=アウエー、H=ホーム、共=共同開催名古屋ラウンド)

ご覧のとおり、1勝5敗とさんたんたる出だしとなった。
特に、第3節のすみだ戦で前半に5失点し、それが響いて結果的に5-7で敗れた試合後にはクラブ内部から、“チームはこれからどうなるのか。F2降格もありうるのか”という不安の声が漏れ伝わって来たほどだった。

不安の要因は成績(=結果)だけに限らない。
どういう路線で行くのか、クラブ全体が共有していないことだった。
若手の『育成』といっても、1人または2人をベテランもしくは中堅の中に投入し成長を見守っていくのが普通だ。
それを新監督は4~5人を一挙にベンチ入りさせている。
そのうえこの結果…。
「いっそのこと、『今年はF2降格も覚悟してくれ、その代わり生え抜きの若手が成長し実力をつけた来季は念願の優勝を目指せるチームをつくってみせる!』と言ってくれれば苦労もいとわないのに!」
という声まで聞こえてきた。

 

▼第9節でようやく若手が結果を出す

それでも、第7節からの連勝で疑問の声も影を潜めてきた。

第7節 4-0 湘南ベルマーレ(共)
第8節 5-4 ボアルース長野(A)
第9節 4-2 Fリーグ選抜(H)
第10節 3-2 バルドラール浦安(A)

特に第9節は4得点のうち3得点を若手の毛利元亮(先制ゴール)と倉科亮佑(2ゴール)が決めると、ホームの町田市立総合体育館のメインロビーは第3節の暗い雰囲気がうそのように明るさを取り戻した。

この日、僕はひときわにぎやかなメインロビーで山本社長にインタビューした。

 


晴れやかな表情を取り戻した山本敏彦社長。

 


第9節後のピッチ上で、ゴールを決めてヒーローインタビューを受ける毛利元亮と♯22倉科亮佑(17歳/アスピランチ)。2人で3点をゲットした。

 

▼チームの求めていた試合ができた

Pivo! 山本さんは昨シーズンのホーム最終戦の試合後、サポーターに向けてあいさつをした。その中で、“年間を通して戦うには助っ人外国人に頼っている場合じゃない、生え抜きの若手を育成すべきだ”と2019/2020シーズンへの方向性、新たな路線を明確に打ち出した。
その路線のもとで若手の育成にたけた新監督がスペインから招請され新シーズンがスタートした、立ち上がりは苦戦したものの、4得点のうち3得点を若手が決めた今日のFリーグ選抜戦での勝利で実を結んだ。

山本 そうですね、おかげさまで今日、生え抜きの若手の選手がああやって点を決めてくれたので、本当に喜ばしいことですし、チームの求めていた試合ができたんじゃないかなというふうに思っています。

Pivo! それまで実は『育成』なのか『結果』なのか、非常に難しいなぁと思いつつ見ていた。苦戦が続いていた状態を山本さんはどう受け止めていたか。

山本 ま、当然シーズンが始まって我慢のときが続きましたし、これからもまだあると思います。ただ僕らは、どこかで若手を使ってフィールドで戦わせない限り、我々チームの未来はないと思っているので。もちろん僕らも『優勝』目指してないわけではないです。上位を目指して戦ってはいますけど。

Pivo! 『優勝』か、上位か。

山本 すごく難しいとこですけど、あえて、上位といわせてください。

Pivo! 今年は、キックオフカンファレンスでも『優勝』とはいってなかった。

山本 そうですね、はい。まあ、去年、その前と『優勝』という2文字をわたしもいってきてしまった中で、結果が出せなかったので。もう一回初心に戻って戦おうと、はい。

Pivo! 育成と結果、二兎を追えばどちらもつかめないかもしれない。そういう意味では育成優先と受け取っていいか。

山本 もちろんです。やはり、どちらかといわれれば、もう、育成優先だと思っています。

Pivo! シーズンインを前に新監督を呼んで、具体的に若手を何人ぐらい使ってほしいとか具体的な指示はしたのか。

山本 いや、特にはしていません。完全に監督に任せて。ただ、僕らがチームの理想とするもの、目指すものはしっかりとルイス監督に話をした中で、人選をしてもらっていると思っているので、そこはもうルイス監督を信用して、はい。

Pivo! 第3節、すみだに5-7で敗れたときのことだが、クラブの内部から、『F2降格』か『F1残留』かというきわどい結果になってしまうのではないかという声も僕の耳に聞こえてきた。あの試合を見ていると、正直、それもうなずけなくはなかった。ホームであの惨敗は悲しいかなというのがあったが、山本さんはどうとらえていたか。

山本 えー、とにかく信じるしかないというのと、どうしても試合には勝ち負けが必ずあって、その中で、いい悪いがあって当たり前だと思っているので。そこはネガティブに見るんではなくて。もちろん、悪かったことはしっかりと反省し、修正し、忘れるんではなくてですね。で、次に臨むということをしっかりやってくれてれば、それでいいと思っていましたので。

わたしは100%選手を信じてますし。もちろん、監督のことも一緒ですけど、はい。なので、今日の試合はわたしも見ててすごく楽しかったですし。応援くださっているスポンサーさんはじめサポーター、ファンの方、皆さんにいい試合をお見せできたんじゃないかなというふうに思っています、はい!

 

▼Fリーグのモデルケースに

今や山本社長を筆頭に、クラブの全幅の信頼の元、指揮をとるルイス ベルナット監督の声も聞こう。

開幕以来続けてきた若手起用がようやく実った、おめでとうございます、と祝福するとスペイン人監督はこう答えた。

「ありがとうございます。ただ、まだここからが始まりなので、今やっとスタートラインに立てたところです。

選手ひとりひとりがダイナミックな動きをしたところはよかったと思います。こういったひとつひとつのプレーが選手の自信につながっていくと思いますし、彼らの中の不安な要素が1点入るごとに彼らの力というものに入れ替わっています」

それにしても4ゴールのうち3ゴールを若手が決めた。この若手優先という路線の実践は日本人監督ではなかなかできない勇気ある行動だ。 監督はこのことについて謙虚にこう語り継いだ。

「日本にはすごい実力を持った若手がたくさんいます。 このあいだのU-20のアジアカップで優勝したことも、それだけの逸材が日本に存在しているということです。また、今日、自分たちのチームの若手もこういうふうに活躍ができ、自らの実力を見せることができました」

若手を起用するリスクについても監督は言及した。

「リスクもあると思います。でも、その中でも彼らを成長させる意味ではこういった環境もすごい重要だと思います。こうしたことは1人ではできません。その意味で周囲のサポート、みんなの協力が必要であり、忍耐強く彼らを見守ることが彼らに自信を与え、今後の彼らの活躍につながっていくと思います」

「忍耐強く彼らを見守る」

チームが苦戦しているときに不安と疑念にかられ心が折れかけた人たちに聞かせたい言葉だ。

振り返れば町田の前の監督も若手を使っていた。ほかのチームの監督もそう。でも、ルイス べルナット監督ほど一度に何人も使える監督はなかなかいない。それについて監督はどう受け止めているのだろうか。

「うちの若手たちは自分の居場所を常に戦って勝ち取っています。そのためにベテラン勢も協力し、(チームのためといいう)高い意識で若手を見守るだけではなく、自分たちも戦い抜いています。そういった彼らに自分の意思を曲げることは絶対にしたくありませんし、彼らのそういった戦う気持ちを尊重するためにも、外の悪いコメントがあってもわたしは自分の道を突き進みます」

次節バルドラール浦安戦も監督は若手を積極的に起用し、前節、首位の大分を破って勢いに乗るチームに勝利した。これで4連勝だ。

浦安戦で監督は、伊藤圭汰、二井岡崇登、中村充、そして菅谷和寿の4人をベンチ入りさせた。二井岡は戦術的な理由から起用を控えたが、伊藤をキャプテン森岡薫、クレパウジ ヴィニシウス、室田祐希というそうそうたる顔ぶれの1stセットに、中村と菅谷を滝田学、日根野谷建の2ndセットに投入。3人は攻守に奮闘し4連勝に貢献した。

町田はこれで5勝5敗・勝ち点15で8位。

育成重視のモデルケースとしてどこまで結果につなげていくのだろうか。

 

山下浩正

♪とっこちゅー、とっこちゅー、我らが母校ぉー♪の埼玉県・所沢中~川越工の6年間サッカー部に籍を置く。C&W音楽に夢中の大学時代を挟んで社会人で再びサッカーを楽しむ。サラリーマン時代に培った雑誌編集経験を生かしてフットサル専門誌を2000年に創刊。2012年から足場をWEBに移し現在に至る。1944年生まれの戦中派。フットサルが日に日に下手になり夜の公園でコソ練に励んでいる。

コメント

みんサル

個サルを検索する ひとりでも参加できる個サルやイベントに行ってみよう!

大会にエントリーする 仲間や友達を集めてフットサル大会に参加しよう!

全国のフットサル施設 全国のフットサル施設からお気に入りの場所を探そう!

RANKING

Special Thanks

  • ベストパートナー
  • ボアスコンプラス