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『フットサルの練習は3回』台風の目となった八戸学院大、躍進の理由とは?【全日本女子フットサル選手権】

▼女子フットサル界の課題をも映し出す躍進

石川県のいしかわ総合スポーツセンターで、開催されている第16回全日本女子フットサル選手権は、大会2日目を終えて、ベスト4が出そろった。そのなかに異色のチームがある。「うちが4強に入って、ちょっと申し訳ない気持ちもあります。フットサルの練習は、大会前に3回しかできなかったんですよ」と畑中孝太監督が恐縮する八戸学院大だ。

「3度の練習でメダル確定」。こんなキャッチ―なタイトルが思い浮かぶが、実際のところ一部に社会人選手も含む彼女たちのほとんどはサッカー部で活動しており、日常的に練習に取り組んでいる。また、冬場は屋外のグラウンドが雪で使えないため、体育館でボールを蹴ることに戸惑うことはない。だが、「人工芝のグラウンドが2面あります。体育館は他の部が使っていて予約できないので、フットサルの練習のために別施設のコートを借りました。そこで計3回の練習をやりましたが、全員がそろったのは一度だけです」(畑中監督)というチームの4強入りは、東北地域の高いポテンシャルを示すと同時に、女子フットサル界の課題も映し出してくれる。

1次ラウンド最終戦で、好守を連発したキャプテンのGK横濱菜奈は「今大会、1試合ごとにチームが成長できているのを、すごく感じます」と話したが、1次ラウンドの対戦順は、彼女たちの躍進を後押しした。まるでロールプレーイングゲームのように、戦いやすい相手から徐々に対戦相手が強くなっていったのだ。彼女たちが初戦で対戦したのは、開催地枠で出場したFC.トンレディース。最年少の選手が13歳、最年長の選手も18歳という極めて若いチームは、まだこの大会のレベルに到達していない。そんな相手に対して初戦で15-1と快勝した八戸大は、全国大会に慣れると同時に勢いづいた。

第2節では初戦を落とし、意気消沈するタバジーダ(関東2/東京都)と対戦する。後半9分に先制したものの、その1分後にはパワープレーから失点を喫してしまう。FP福士優利香は「パワープレーの守備は練習できていなかった」というが、3度の練習しかしていないのでは無理もないことだ。だが、追いつかれた直後に福士がミドルシュートを決めると、その後、再びパワープレーに出たタパジーダの反撃を封じ込め、2-1で競り勝った。

そして、決勝ラウンド進出をかけたプログレッソ大阪ヴァーヴ(関西3/大阪府)との第3節では、前半4分に福士の2試合連続となるゴールで先制する。その後、何度もピンチを迎えながらも、GK横濱が抜群のポジショニングで相手のシュートを防ぎ続け、前半をリードしたまま折り返した。この守護神の活躍にFPも応え、後半2分にはFP根本ひかるが追加点を挙げる。大阪も試合時間が5分以上残っている段階からパワープレーを開始したが、ダバジーダ戦で一度、パワープレーを経験した彼女たちはゴールを守り抜く。残り1分を切ってから1点を返されたが、リードを守り抜いて3連勝を飾った。

 

 

▼基本に忠実な守備で流れを作る

フットサルの経験値不足を、彼女たちはどう補ったのか。「ゴールが中央にあるのはサッカーと一緒なので、とにかくボールとゴールの間に入るように徹底させました」と、畑中監督は振り返る。セットプレーの前にタイムアウトを取られると、ピッチに戻る選手たちに「何をしてくるかわからないけど、何かしてくるぞ!」と大声で言い、選手たちが「怖い」と怯える一幕があったが、そんな裏表のない指揮官の指示はゴールを守ればいいというこの球技の本質を射ているものだ。

またGK横濱は「運動量の部分では勝てると思いました。サッカーは90分と長いので、うちの選手たちはずっと出ても走り切れる」と、12分ハーフで行われている予選がメリットとなったことも付け加える。そして、「サッカーではシュートを外した後に『ああ』って悔しがったりして、切り替えが遅れてしまうことがありますが、フットサルでそれをやると失点につながります。その切り替えを早くすることは重要だと思います」と、普段のピッチより、はるかに狭いコートで戦う上で特に注意した点を挙げた。

第2節で八戸学院大に敗れたタパジーダのGK松尾栄里子は、こうしたチームに勝つために「もっとフットサル特有の動きに磨きをかけないといけない」と振り返る。「チームとしてセットプレーはすごく取り組んできましたし、チームの強みだったのですが決めきれなかった」と、精度の向上の必要性を感じていた。

フットサルの練習は大会前に3回しかできなかった八戸大だが、フットボールの練習環境という点では、多くの社会人女子フットサルチームよりも恵まれている。アスリートとしての能力は、大学サッカー部の選手の方が高い可能性は十分にあり、今回の八戸大の4強入りも、東北地域や大学サッカー部の可能性に加え、女子フットサルチームの整備しきれていない環境が引き金となっている。

ここまでロールプレーイングゲームのように、段階的にストーリーを進めていった八戸大。当初、予定していなかった4強入りを果たし、帰りの新幹線の切符を買いなおすことになった畑中監督の率いるチームは、『ラスボス』の前に準決勝でラスボニと対戦する。バルドラール浦安ラス・ボニータスは、この3試合で対戦してきた相手よりも実績も、実力も、大きく上回る相手だ。

今大会の後、サッカーのカップ戦を最後に、「警察官になります。守る対象がゴールから、一般市民になります」と茶目っ気たっぷりに笑うGK横濱にとっては、フットサルの公式戦は残り最大で2試合。「私たちはチャレンジャーだから、自分たちの良さを出し切れるように、思いっきりぶつかりたい」と、さらなるサプライズを起こす意気込みを語った。

 

河合拓(かわい・たく)

2002年に当時、国内唯一のフットサル専門誌Pivo!の編集部に入りフットサルに魅力せられる。その後、2006年のサッカー・ドイツW杯を前に週刊サッカーマガジン編集部に入り、セレッソ大阪、ガンバ大阪、横浜FCなどを担当。2011年から2014年まではゲキサカ編集部で活動。2015年からはフリーランスとなり、2016年に「FutsalX」を立ち上げ、フットサルを中心に取材しながら、サッカー日本代表も取材する。U-18フットサル選手権は第1回大会からすべての大会の取材を続けている。

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