ピヴォ×みんサル

決勝戦、浦安ラス・ボニータスがこだわったものとは?【全日本女子フットサル選手権】

日本女子フットサル選手権大会決勝、バルドラール浦安ラス・ボニータスは先発に守備に強いセットを選んだ。駆け引きはここから始まっていた。

 

▼ファーストで出場したセットが持つ意味

バルドラール浦安ラス・ボニータスとSWHレディースによるJFA第16回全日本女子フットサル選手権大会の決勝後、頭を抱えていたのは決勝の動画を編集するスタッフだった。

「シュート本数が少なかったですよね? なかなか迫力のあるゴール前の攻防がなくて」

決勝の公式記録を見ると、シュート数はバルドラール浦安の16本に対し、SWHレディースは15本。ここに「ボールは保持できていた」というSWHレディースの上久保仁貴監督のコメントを加味すれば、いかに彼女たちが攻めあぐねていたことがわかるだろう。

玄人好みの決勝を演出したのは、浦安の米川正夫監督だ。

米川監督はフットサルに限らず、私生活でも『見せ方』にこだわる人物である。実際、彼のつくり上げてきたチームは、男女問わずに美しいフットサルを展開してきた。今大会でも、1次ラウンドから浦安は美しい定位置攻撃を何度も仕掛け、引いた相手のゴールもこじ開けてきた。

だが、決勝で米川監督がこだわったのは、美しさではなく、結果だった。

そこには自クラブから最強の『個』であった女子日本代表FP江川涼を、今季開幕前に引き抜かれた影響もあったのかもしれない。

決勝までの4試合、浦安の先発にはFP伊藤果穂、FP中井仁美が組み込まれていた。だが、決勝で先発させたのは、FP田中千尋を中心とする守備に強いセットだった。米川は、「今日ファーストで出場したセットは、攻撃はいまいちでしたが、ディフェンスの能力が高い。相手のパワーセットを抑えることができれば、自分たちの方に勝機があるんじゃないかなと」考えていたと明かす。

『目には目を』ではなく、圧倒的な個の力を持つSWHレディースのファーストセットに対し、相手の良さを抑えられるセットをあえてぶつけたのだ。しかも、守備のスタートをハーフウェーラインに設定し、そこからマンツーマンで対応するという徹底ぶり。

これにSWHは戸惑った。相手の先発メンバーを見て「一瞬、僕もセカンドセットを入れ直そうかなと思った」というSWHレディースの上久保監督だが、ここまで内容も良く、結果も出ていた流れが壊れることを危惧し、動かなかった。そしてハーフからマンツーマンという相手の守備に手を焼かされる。

「慣れていないところはありました」

「女子の試合で、相手がこうしてきたからこうするという監督同士の駆け引きは、あまりありません。それほど細かくオーガナイズしなくても、やれてしまうし、勝ててしまいます。でも、全国大会に行けば、こういう良いチーム、良い指導者がいる」

そう上久保監督が言うように、普段はクワトロ(4-0)で相手を攻略できるSWHは、なかなかボールを前に運べない。江川という日本女子屈指のピヴォがいるものの、彼女を前に置く3-1の布陣に移行できなかった。

「おそらく習慣だったと思います。正直、クワトロ(4-0)を構築するのに、相当な時間をかけました。一応、オプションとしては3-1も持っているのですが、どうしても降りてきてしてまって、4-0の形になることが圧倒的に多い」と、上久保監督は要因を分析した。

マンツーマンを敷いた浦安は、個のボールの争いの部分でも勝つ場面が多かった。1次ラウンドで福井丸岡ラック、準決勝でSWHレディースと激闘を繰り広げたSWHレディースに対し、浦安は準決勝で八戸学院大学と対戦し、GKを含めたボール回しをしながら時間を進め、さらにサードセットの選手も起用しながら、疲労の蓄積を最小限に収めた。組み合わせについては、“運”に恵まれた部分もあったが、そこからの5試合、タイトルを見据えて戦い方を選んだ米川監督の手腕も語り落とせない。

これまで浦安のトップチームを含め、米川監督は男女で5度、全国大会の決勝に立った経験があった。しかし、タイトルをつかむことはできていなかった。初めて、日本一に輝いた米川監督は、「5度目の正直(笑)。でも、3位になっていることもあるので、5度目どころじゃないのですが(苦笑)。個人的にはこうしたちゃんとしたタイトルを取れていなかったので、良かったです」と、目を細めた。

敗れた上久保監督にとっても、この試合は良い刺激になったようだ。「いつもあと一歩、届かないんですよね。本当に……。何か書くことがあれば、『監督の差で負けた』と、書いておいてください。気持ちを切り替えて、地域CLに出られるように頑張ります」。

両チームは今季、地域CLで再び対戦できる可能性がある。ただし、その舞台に立つためには、それぞれ関東リーグ、関西リーグを勝ち抜かなければならない。

これからの女子フットサル界を引っ張っていくことが期待される両クラブ、両監督の第1ラウンドは、浦安と米川監督の完勝となった。第2ラウンドが、どうなるのか。その実現にも期待したい。

 

河合拓(かわい・たく)

2002年に当時、国内唯一のフットサル専門誌Pivo!の編集部に入りフットサルに魅力せられる。その後、2006年のサッカー・ドイツW杯を前に週刊サッカーマガジン編集部に入り、セレッソ大阪、ガンバ大阪、横浜FCなどを担当。2011年から2014年まではゲキサカ編集部で活動。2015年からはフリーランスとなり、2016年に「FutsalX」を立ち上げ、フットサルを中心に取材しながら、サッカー日本代表も取材する。U-18フットサル選手権は第1回大会からすべての大会の取材を続けている。

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