2018年3月9日、10日、11日、駒沢
(PHOTO,TEXT・佐藤功)
1月21日から約1か月ちょっと、久しぶりの駒沢大学駅である。さすがに、駒沢オリンピック公園までの道は覚えていた。体育館に入れば、トロフィーが飾ってある。第23回全日本フットサル選手権は、その瞬間にいろんなことを感じると同時に、この1年を振り返るいい機会でもあった。
フウガドールすみだバッファローズは、若さゆえの恐れ知らずな心があった。そして、大敗という結果は、夢の舞台で現実の厳しさを知る二面性があった。
その彼らがサポーター席に移動し後押しをしたのが、フウガドールすみだ。最後の最後で同点に追いつく勢いを観た。そして惜敗後、涙を流す女性サポーターが印象的だった。
ペスカドーラ町田は、中井健介と森岡薫を出場停止で欠き苦しんでいた。だが、勝利まであと一歩という意地を見た。彼らはこの大会に集中していた証拠である。
もう、府中アスレティックFCという名称を読むのはこれで最後かもしれない。アリーナ問題に振り回された今シーズンの有終の美を飾るべく戦っていた。
この3日間で最も輝いていたのは、バルドラール浦安だろう。ディドゥダが後方から鼓舞する姿から、チーム全体の士気の高さが伝わった。
あのチャントがしばらく聞けなくなると思うと寂しくなる、湘南ベルマーレ。フィウーザと目が合った瞬間、ニコっと笑ってくれた。その数秒後、ロドリゴのPKはゴールの右側に反れていた。
歴史を変えたシュライカー大阪が無冠で終わった。だが、徹底的に研究されマークされた1年が終わり、彼らはまた挑戦者に戻る。これほど怖い挑戦者はいないだろう。
Fリーグの歴史は、名古屋オーシャンズの勝利の歴史そのものである。決勝はケガで2人を欠き、苦しみながらひとつになり戦う王者の姿は美しかった。
3日間、観客動員数が1,000人を下回った方が多かった。だが、駒沢には熱があった。一年を通した数々のドラマの上に成り立ち、喜怒哀楽を揺さぶられた日々を回想しながら観ていた人も多いはず。ファン、サポーター、選手、スタッフが今シーズンの締めくくりを堪能していた。大事なものをちゃんとフットサルは持っている。決して他の競技に劣ってはいない、どのスポーツにも共通している醍醐味は確かにある。
第23回全日本フットサル選手権はお祭りだった。夢が詰まった、心地よい空気があった。
あれほど熱かった室内に比べ、外の空気は冷たかった。寒さに震えながら、振り向くことなく駒沢を去る。ひっそりと佇む体育館を背にし、風の影響でクラブの旗が裏側になっているところは見ないようにした。フットサルの空気が何一つない道をひとりで歩く。もう、夢は覚めていた。